ネーミング

みんなは、ネーミング(naming)という言葉を聞いたことがあるだろうか。「名前をつけること。特に商品や会社に名前をつけること」(広辞苑)なのだが、これは日本人が作った英語つまり、一種の和製英語だろう。もちろん、nameという動詞をnamingという形で使うことはあっても、日本語で使われるような意味では使わないのではないか。アメリカに渡ってきて以来、いろいろな人に尋ねてみたが、英語では、まず日本語で使われるような使い方はしないと言われた。日本語では、「ネーミングがいい」とか、「売れるも売れないもネーミング次第だよ」とか、「ネーミングのうまさに思わずうなった」などという形で使われる。企業は日夜、新しい魅力ある商品を生み出そうと努力しているが、このネーミングにもずいぶん知恵を絞っている。その商品にあった、また、消費者に広く受け入れられ愛される名前をつけようと頑張っているわけだ。
ソニーが1979年(まだみんなの生まれる前…)に放った大ヒット「ウォークマン」は、成功したネーミングの代表格だろう。発売当初、ソニーはこの「ウォークマン」という商品名を、日本でのみ使うことにしていたらしい。アメリカ向けのものには「サウンド・アバウト(sound about)」、イギリス向けには「ストー・アウエー(stow away)」、スウェーデン向けには「フリース・タイル(free style)」と、それぞれのネーミングで対応することになっていたそうだ。聞いた話だが、アメリカ側のマーケティング担当は、「ウォークマン」の話を聞くや、間違いなく大ヒットになると確信したが、ネーミングが悪すぎると注文をつけたそうだ。「こんなにすばらしい商品も、そんなへんてこりんな名前じゃ売れないだろう!」ということだったらしい。今や、「ウォークマン」は世間に受け入れられ、誰も、変な名前などとは思わなくなったが、どうだろう、よくよく考えてみると、確かにへんてこりんな名前ではないか。アメリカ人には、いや、英語を母国語とする人には思いもつかないネーミングなのではないか。
そんなわけで、ソニーは、出荷先にあわせたネーミングで「ウォークマン」の販売を始めたが、各国で、発売と同時に予想をはるかに上回る爆発的な大ヒットとなり、たちまち売り切れ状態となった。早く品物を送ってくれと海外から激しい催促を受け、ソニーは増産に次ぐ増産で対応したのだが、品薄状態は解消しなかった。このため、パッケージをそれぞれの国用に変える暇がなく、日本の「ウォークマン(WALK MAN)」のまま出荷せざるを得なくなり、「ウォークマン(WALK MAN)」がそのまま海外の店頭に並ぶことになった。「ウォークマン(WALK MAN)」なんてみっともない名前で本当に大丈夫なのかという担当者の不安を他所に、「ウォークマン」は以前にもまして売り上げを伸ばしたのだ。どうやら、「どこでも、好きなところで自分だけの音楽を楽しめる」という全く新しいコンセプトのもとに開発された商品が、「ウォークマン」などという想像すら出来ない名前で売られているということが受けたというのだ。つまり、画期的な商品+画期的なネーミング=大ヒットとなったわけだ。それ以後、「i-pod」の登場まで、「ウォークマン」は携帯ヘッドフォン型ステレオの代名詞として君臨し続けた。最近、とかく問題続きで元気のない我がソニーだが、「ウォークマン」は、日本で生まれた画期的な商品が、日本流のネーミングで堂々と戦ったすばらしい例だと思っている。

5 Comments:
すごいですね!「Walkman」の話は全然聞いたことがなかったです。若いからかもしれませんが、私に取っては「Walkman」はいい名前だと思います。でも任天堂の新しい「Wii」は分かりませんねぇ。
面白いですねぇ。
私も「Walkman」というネーミングがぴったりだと思います。でも私は「Wii」という名前もいいと思いますよ。「ウィー!」というのは楽しみの音だと思うからですね。
始めてはもちろんWalkmanというのが英語の言葉だと思いましたが、日本で作った言葉というのを分かったときが思い出します。それは多分私が中学生だった時です。その時はあまり気にしなかったのですが、今考えて見るとすごいですね。世界が使う言葉を作るなんて。
中々面白い話ですね。私はアメリカでは「Walkman」という名前が付けたのは最初からだったと思いました。ネーミングは不思議なこてで、どんな名前が好きになるのかという問題は難しいのですが、それは商品の一番大切な点でしょう。他の企業が多分同じような商品が作れますが、聞きが良い名前を真似することはほとんど出来ません。
ネーミングは日本人が言葉にとって、すばらしい創造力の証明ですね。和製英語の中にも色々な面白い例がたくさんあります。
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