J462ブログ

2006-09-17

Ketchup?


アメリカに渡ってきたのはアトランタオリンピックの夏だった。もう10年も前のことになるが、ものすごく緊張しながらも、わくわくする気持ちでサンフランシスコ空港に降りたったのを、今もつい昨日のことのように思い出す。あれは、その初めての晩のことだった。

その晩は、一度会社の人と晩ご飯を食べに行ったのだが、何故か、お腹がすき、一人でファーストフードの店にハンバーガーを食べに出た。マクドナルドかバーガーキングかよく覚えていないが、そのどちらかだったと思う。店に入り、カウンターの前にできた列に並ぶ。思ったよりも客が多かった。日本にも、ファーストフードの店はあちこちにあるから、まあ問題はないだろうと思ったが、私は、自分の番が来るまで、注意深く、外のお客さんがどのように注文しているか観察し始めた。程なく、こちらでは、ほとんどみんなセットメニューを頼んでいることが分かった。「なるほど、セットメニューの番号を言えばいいんだな。ふーん。番号の後に飲みたい飲み物を付け加えるんだな。」そして、店内でたべるのだから、「here」と言えばいいことも分かった。なるほど。「~番お願いします。コーラで。ここです」だな。難しくはないだろう。これなら大丈夫だ。

やがて自分の番が来た。「~番のセットお願いします。飲み物はコーラをお願いします。ここで食べます。」列に並んでいる間に、何度か、口の中で練習しておいたおかげで、思ったより、スムーズに言えたような気がした。「やるじゃん!」と密かに得意になっている私に、店員が言った。「ketchup?」今なら全然問題なく「お願いします」あるいは「いやけっこう」と言えるのだが、その時の私は、何を言われているのか全く見当もつかなかった。「すみません、もう一度おっしゃってくださいませんか」と言えばいいところだが、その時はとっさのことで、どうしていいか分からず、ただ店員さんの顔を見つめ返した。するとまた、彼女が「ketchup?」とくりかえす。皆目見当のつかない私。それでも、フレンドリーな雰囲気だけは失わないようにと、笑顔を浮かべて彼女を見つめ返した。また彼女が「ketchup?」とくりかえし、何を言われているのか分からない私は、フレンドリーな笑顔だけで優しく答える。「ketchup?」「(にこにこ)」「ketchup?」「(にこにこ)」・・・。なんとも間抜けなラリーを何度か続けるうちに、さすがの私もいろいろ考え始め、そしてひらめいた。「そうか。なるほど。恐らく、私の英語がまだ上手ではないから、もっと練習して、catch upしなさいよと励ましてくれているんだ。この店員さんは、いい人なんだ!不安な気持ちで異国にやって来た男をこんな風にさりげなく応援してくれる人がいるんだ!」私はもう感動してしまって、それまでの百倍ぐらいの笑顔を作り、彼女の手を握らんばかりに言った。「catch up! ?」「・・・」彼女の我慢も限界に達してしまったのだろう。ものすごい顔になって「KETCHUP!!!」と叫び、あのハインズのケチャップのパックを4つほど私に投げつけ、指をはじきながら「NEXT!」と私にとどめを刺したのだった。後ろに並んでいらいらしながら待っていたお客さんに押されながら、私はそのまま消え入りたい気持ちでその場を離れた。

3 Comments:

At 月 9月 18, 12:09:00 午前, Blogger Chun-Yu Lu said...

外国語をしゃべる時に、緊張して、突然に頭が空になることは時々ありますね。数年前に、私は家族と一緒に日本を旅行しました。その時、うちの兄も私もは日本語を勉強し始まりました。お腹がすいて、銀座にあるマクドナルドに行きました。兄は何分も店員さんに話しても、何も買わなくて、席に戻りました。なるほど、その店に、セットの番号はA,B,C,...と呼びました。しかし、兄は緊張して、台湾での習慣で、1,2,3....と注文しました。でも、今日本のマクドナルドも1,2,3...とセットを呼ぶそうです。

 
At 月 9月 18, 06:44:00 午後, Blogger ライオンズ said...

変かも知れませんが、私にとって、こういう話っは最高です。起こる時には多分面白くなくて、ちょっと可哀想な感じがしますねぇ。
でも、一番語り好む話は私がなんとか困った話です。その一瞬間の恥ずかしさを忘れた後、面白くなります。簡単な誤解だけですから面白いです。それとも、皆がその困る気持ちと恥ずかしさがよく分かるので、話芸者として、相手を感動させることができます。
この話を、ありがとうございます!
少し

 
At 月 9月 18, 11:39:00 午後, Blogger ランディー said...

あはははは!この話をありがとうございます。
「にこにこ」の部分が特に好きです。

私の日本のマクドナルドの思い出がほとんど恥ずかしいのです。有留先生さえそういう思い出をお持ちになると知っていて、どこか慰まれたような感じですね。


(「What would you like?」「私、日本語ができます。ハッピーセットお願いします!」「かしこまりました。以上でよろしいでしょうか?」「 … 」「以上でよろしいでしょうか?」「 ………い… じょう… 」 日本語ができると言ったのに。すごく赤くなったねぇ)

カッパ

 

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