方向音痴

恥ずかしい話だが、私はものすごい「方向音痴」だ。方向感覚が極めて鈍く、車などで何度も走っても、なかなか道が覚えられない。パーティーなどに招待された場合など、地図を描いてもらうが、まず、まっすぐ行けたためしがない。
もう、このブログに何度も書いたが、日本語を教える前は半導体製造装置メーカーでサラリーマンをしていたが、その最後の2年はコネチカット州のシェルトンという町にある代理店で仕事をした。セールスとメンテナンスのサポートが仕事だった。代理店の人と一緒に営業活動に各地を回り、装置が売れると、その据え付け・立ち上げ (installation)と装置の使い方の指導に出向いて数週間客先に滞在するという仕事だった。代理店の人と一緒に出かける時は大丈夫だった。問題は、据え付け・立ち上げやメンテナンスのために客先に一人で出向く時だった。秘書のリンダさんが、飛行機やホテルの手配からレンタカーの段取りまでしてくれ、出張の前の日に、「ヒロ、はい。これね。いってらっしゃい!」と、必要な書類を渡してくれる。その中に、空港から客先までの地図も添えられていた。この地図。これが、本当にいつも厄介だった。
客先最寄りの空港に着くと、レンタカー会社のカウンターへ行き、車を借りる。リンダさんにもらった地図をカウンターの人に見せ、簡単に説明してくれと頼むと、たいてい、「もちろん!」と気持ちよく説明してくれる。「この前の道を右に行って、すぐ左へ曲がると、このルートXです。」っていう感じですらすら、きびきび対応してくれた。でも、私の頭がついていけるのは「この前の道を右に行って」あたりまでが精一杯。そこから後は、あっという間に分からなくなってしまう。質問も出来ず、ただもう「ぼーっ」となってしまうのだった。「…です。分かりますね?ここは全然難しくないところですよ」という決まり文句で、はっと我に返り、顔だけ、さも分かったというような笑顔をつくり、なるべくさわやかに「ありがとう」といってキーを受け取り、何も分からないまま、不安だけ一杯になって車に乗り込むのだった。唯一の頼りはリンダさんの地図。それを一所懸命見ながら車を走らせているつもりだったのに、気づけば、南北反対に向かっていたとか、高速から降りる出口を何度も間違えるなんてことはざらだった。たいていいつも、ほとんど半泣きになりながら、普通の人なら15分ぐらいのところを2時間ぐらいかけてやっとホテルにたどり着くのだった。ホテルに着くころはもうくたくたにへたばって、荷物を運ぶのも一苦労なほどになっているのだった。
一番ひどかったのが、シカゴのモトローラに出張した時のこと。オヘア空港で車を借り、走り出したはいいのだが、空港から出てさっさと高速(highway)に乗るつもりが、なかなか乗れずにいた。さすがの私も変だなと思っていると、さっきのレンタカー屋の前に戻ってきてしまっていた。「え?そんな馬鹿な…」。気を取り直してしばらく走り続けると、見覚えのある風景が続き、また、さっきのレンタカー屋の前に。あまりの情けなさに思わず笑ってしまったが、「よし、これがスタートですよ。これまでは練習だったんですよ。これからが、本番!」と自分に言い聞かせて、今度は少し注意しながら走り出した。が、しばらく走り続けると…。「え~?!」またもやあのレンタカー屋の前に戻ってきてしまったではないか。「とほほ…。俺ってこんなに馬鹿だったのか…」ものすごく情けない気持ちになった。いくら楽天家のパンダみたいな私も、さすがにもう一回行ってみようという気にはなれず、車を止めて、レンタカー屋に道を尋ねに行った。「空港から出られずに空港内をもう三周もしております」などと言えるわけもなく、お手洗いを借りに寄りましたという口実で、カウンターに声をかけ、「あ、そうそうもう一度確認するけどさ」と道を聞きなおした。まあ、聞いても結局、全然分からなかったんだけど、その後は何とか空港からは脱出できた。(もちろん、その後も迷いに迷ったのだが。)
こんな調子だから、最近もうはあきらめている。迷ったら、迷った時のこと。あせらず時間をかければいいと開き直ることにしている。幸い、家内も私同様「方向音痴」。道に迷っても「え~?また?何やってんの?いい加減にして!」などと責められることはない。二人して、「迷っちゃったぞ…」「うん。そうみたいだねぇ」「ま、いいか」「うん」という感じだ。迷ったおかげでおもしろいお店を偶然見つけ、そこで買い物を楽しんだりすることもないではないので、迷うのもけっして悪くはない。まあ、その偶然見つけた店へもう一度行こうとすると、それはそれで大変ではあるのだが…。

7 Comments:
金曜の晩にこのエントリーをアップロードしておいたんだけど、どういうわけか消えてしまっていたので、もう一度アップロードしました。
大変ですねぇ!
こんなことにもう慣れていらっしゃるでしょうか?迷った人が「ま、いいか」と言えるほど落ち着けることできれば、いいですね。私は一回ジョージアのLoop10高速のせいで3時間も迷ってしまって、すごくパニックしました。
迷った場合に面白くするというのはいいですね!
私は「方向音痴」と言えないと思いますが、どことなく、行き場に近づくと、必ず迷ってしまいます。いつも90%できるようですが、最後は見つけ難くなります。
それとそのGIFはアーソームです!
二十一世紀は方向音痴にとって、幸せな世紀になるかもしれません。多分将来の車は全部カーナビがあって、楽に運転することができますよ。
先生の話は私の友達を連想させますね。実はここで会った先輩の話なんですが、その先輩も方向音痴で、セイントルイスに3年もいたのにいつも道に迷って彼女が一緒にいないと困りますね~
あ、ぼくはよくわかります。いつもどこかえ行くとき、必ずGoogleマップの航空写真を使って、道のあたりにあるビルの色や形と木の多さを確認しなきゃ目的地には着けないのです。
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