J462ブログ

2007-03-05

ドモアリガト ミスター ロボット


先日の金曜会でドラマ「電車男」の第一話をみんなで観たね。でも実は、1年生や2年生の学生達は本当に「電車男」を面白いと思うのだろうかと、正直、少し不安だった。日本への留学経験のあるみんなならまだしも、彼らは大丈夫だろうかと思ったのだ。でも、あっという間に会場は爆笑に包まれて、エンディング・テーマの流れたときには拍手喝采だった。みんな楽しんでいるというのがよく分かった。私は、きっと電車男や彼のネット友達の少々エキセントリックな「おたくぶり」が面白かったのだろうと思った。だが、あの後何人かの学生と話してみて、それだけではないということに気づかされた。ほとんどの学生達は、ネットの住人達の極端な「おたくぶり」を面白がりながらも、どうやら、電車男と彼のネット友達との関係を「分かる分かる」と身近なものに感じているようだったのだ。私としては、現在の日本文化の極端な部分を面白おかしくドラマに仕立てているという感じで捉えていたのだが、彼らのほとんどは、このストーリーに共感できるというようなことを話してくれた。これは本当にうれしかった。

知っての通り、あの第一話のはじめに、スティックスの「ミスター・ロボット」流れる。これ、83年の大ヒットなんだけど、そんなこと知ってるわけないよな。もう23年も前のことなんだからな。この歌が流れていたころ、日本とアメリカの間では、「自動車摩擦」が大問題となっていた。日本の自動車のアメリカへの輸出量が爆発的に増えたことにより、アメリカの自動車工場が縮小を余儀なくされ、たくさんの人たちが解雇された。これは、世界に先駆けて自動車の大量生産を始め、モータリゼーションを生み出したアメリカ人のプライドをいたく傷つけたようであった。また、人々は、日に日に増え続ける日本車の不気味さに恐れを感じたのかもしれない。当時日本のメディアは、全米のあちこちで、日本を敵視する人々が日本車をハンマーで叩き壊したりするシーンを次々に報道していた。海外にはまだ出たことのなかった私は、今アメリカに行くのはちょっと怖いなあと思ったのを覚えている。しかし、痛手をこうむった自動車産業には、「日本憎し」の気持ちだけでなく、「我々も日本に学ばなければいけない。やつらの快進撃には何か秘密があるはずだ」という反省の気持ちも起こったようで、経営者が大挙して日本の工場に見学にやってきたりした。「ミスター・ロボット」を聞いてみると、当時のそんなアメリカの気分が表れているような気がする。

この曲は日本語で始まる。(まったくをもってものすごい発音なのだが…)
Domo arigato,Mr. Roboto,
Mata ah-oo hi made, また会う日まで(まったく、すごい発音だ)
Domo arigato, Mr. Roboto, himitsu o shiritai. 秘密を知りたい。
このミスター・ロボットを日本人だと考えれば、「どうしてそんなに安く車が作れるのか?いったいあいつらは何者なんだ?何か秘密があるはずだ」というように読めないだろうか。…毎日毎日猛烈に働いて、ただただ不気味に製品を作り続ける、そうだやつらはロボットに違いない!…
You’re wondering who I am-machine or mannequin
With parts made in Japan
…
I’ve got secret I’ve been hiding under my skin
My heart is human, my blood is boiling, my brain is IBM.
「そうです。私には秘密があるのです。パーツは安い日本製だけど、どっこい、頭脳はIBM製ですよ!」とアメリカのプライドをチラリとのぞかせている。そして、本音の一言。
Thank you very much, Mr. Roboto
For doing the job that nobody wants to
きっと、当時の大多数のアメリカ人には、日本というものが全然分からなかったのだろう。どんなやつらなのか想像しようにも、材料とてなかったのではないか。あるのは、じわじわ増え続ける日本製品ばっかり…。これじゃ、「Mr. Roboto」になっちゃうわけだよな…。

あれから23年がたった今、多くの学生が、日本のテレビドラマを観て共感できると言う。身近なものとして、親近感を持って語れると言う。これは本当に大きなことだと思う。自動車摩擦のころ、日本の産業を特集したTIME誌の表紙は、何と、浮世絵顔のサラリーマンだったりしたのだ。当時これを差別的だと憤慨するむきもあったのだが、今にして思えば、外に日本を語れる材料がなかっただけだろうと思う。浮世絵、芸者、相撲、当時のアメリカの雑誌の日本特集の挿絵はこんなのばっかりだったようだ。しかしあれから、二十有余年、我が、5年生のクラスのメンバーをみてみれば、吉幾三やSPEEDを聞いて育ったワンさん。日本のマンガを真剣な研究対象として見据えたランディーさん。村上と三島を心から敬愛するキャリーさん。日本の縄文土器に入れ込み、日本まで発掘しに行くライオンズさん。同じ女流作家として、ライバル吉本ばななを見つめる呂さん。そして、日本のドラマのことなら知らないことのない金さん。みんな、それぞれに親近感や共感を持って何時間でも語れる「日本」を持っている。これは本当にすばらしいことだ。

4 Comments:

At 月 3月 05, 11:36:00 午後, Blogger Chun-Yu Lu said...

そのエントリはとてもとても面白いですね。読んだ前に、そのミスター ロバットの歌はただ面白いですが、読んだ後で、そんな豊かな歴史のことがあって、もっと面白いと思いますね。先生、そのエントリをありがとう!

 
At 土 3月 10, 08:21:00 午後, Blogger ライオンズ said...

私もミスター・ロボットは歴史的な意味があると知りませんでした。ロボットは好きなので、この歌も好きでしたが、この意味を考え込むと、どうでしょうねぇ。

 
At 土 3月 10, 10:55:00 午後, Blogger Brad said...

大学の一年生の時には、ある友達は私をSTYXのコンサートへ連れて行きました。今でもミスター ロバット以外のSTYXの歌はあまり考えだせないのだが、コンサートではずっとその歌を待っていました。しかしヒットとして大き過ぎて、その歌を演奏するのが退屈、又は嫌いになったかもしれないので、その夜にはミスター ロボットを演奏しませんでした。やっぱり私は何回も聞いたのだが、歌の意味や歴史をあまり考えませんでした。本当に面白いことだと思います。

 
At 日 3月 18, 10:28:00 午後, Blogger ランディー said...

へ〜 私も、有留先生のエントリーを読む前に「ミスター・ロボット」を歴史的に考えていませんでした。面白いですね!

 

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